福岡のビンテージビル「リノベーションミュージアム 冷泉荘」
動画の目次(クリックすると動画の該当部分へリンクします)
- 建物概要
- 住居から事務所へのコンバージョン・期間限定プロジェクトの開始(2006年~)
- 「リノベーションミュージアム冷泉荘」の誕生(2010年~)
- 冷泉荘管理人 杉山の日々の仕事~いろんな「ひと」をつなぐ~
- 入居者さんのお話しから見える、冷泉荘の魅力「最新であること、ユニークであること、開かれていること」
- ビンテージビルのおもしろさを伝える取り組み(月刊冷泉荘・1階レンタルスペース)
- 耐震補強工事と大規模改修工事~築100年を目指して~
(吉原住宅有限会社, 2020年撮影, 10分)
ビルストック文化の学び合い、そして発信
博多の伝統文化が色濃く残る福岡市博多区上川端町に位置する「リノベーションミュージアム冷泉荘」は、築60年をこえる集合アトリエです。もともと集合住宅として建てられた冷泉荘。建設当時は、周辺にはまだ木造家屋が並ぶ中、近代的な鉄筋コンクリート造の建物でした。冷泉荘の前を通りかかった方からは「憧れてよく遊びに来ていたよ」という話も。しかし、老朽化に伴い空室が目立つとともに建物もスラム化。そんな中、2006年に起死回生の一手として一棟まるごとオフィスビルへコンバージョンします。いまでは「ひと」「まち」「文化」を大切に思う人々が集まり、再び賑やかなビルになりました。
冷泉荘のオーナーである吉原住宅有限会社は、「福岡の古い建物を大切にする考え方の実践(ビルストック活用)」を運営の基本理念に掲げています。そのため、冷泉荘では改修やリノベーションの際も、できるだけ使えるものは使い、工事の痕跡もあえて残しています。冷泉荘が歩んできた過程を、目に見える形で建物に刻み込んでいく。「ここは修理をしたんだな」「以前入居していた人はこんな内装が好きだったのか」と冷泉荘を訪れた方に、その痕跡をみて想像して楽しんでもらう。”リノベーションミュージアム”とは、そんな「冷泉荘の建物そのものを、まるでリノベーションの博物館のように楽しんでもらいたい」という想いから、名づけられました。
冷泉荘の文化祭「れいぜん荘ピクニック」
冷泉荘では毎年1〜2回オープンアパートイベント「れいぜん荘ピクニック」が開催されます。この日は、マーケットや各アトリエで開かれる入居者さん企画のイベントなど、冷泉荘をまるごと楽しめる一日。その中でも目玉は、管理人さん企画の「管理人解説付き冷泉荘ぐるっと一周ツアー」!冷泉荘のあゆみや改修ポイント、入居者さんの紹介など、ぱっと見ただけではわからない、いろんな話を聞くことができます。なんと一棟まわるだけなの、長いときで1時間半もかかるという充実っぷりなのです。
築100年を目指して
冷泉荘では、2011年に耐震補強工事を実施。これによって、コンクリート強度的には築80年までもつ建物になりました。2012年には、これら一連の活動に対して「第25回福岡市都市景観賞活動部門」にて部門賞をいただくことができました。あとは、私たちがどう使っていくか。築100年を目指して、冷泉荘と私たちの挑戦はまだまだ続きます。
冷泉荘ならではの4つのユニークポイント!
セルフリノベーション可&原状回復義務なし
室内の内装は入居者さんが自由に変更OKなセルフリノベーションスタイル(※事前に内容相談は必要です)。かつ、冷泉荘のコンセプトに則って、退去の際の原状回復義務はありません。なので、冷泉荘の各部屋は、歴代の入居者さんによって脈々と引継がれ、更新され、付け加えられてきた一品ものです。
「ひと」「まち」「文化」をキーワードに集まる多様な入居者さんたち
冷泉荘には、フォトスタジオ、NPO法人、ものづくり工房、建築設計事務所、語学教室、カフェなど、業種もワークスタイルも、バライエティに富んだユニークな入居者さんたちが入居。それでも共通するのは「ひと」「まち」「文化」を大切にしてるということ。コラボ商品をつくったり、お互いのアトリエを行き来したりなど、入居者さん同士の交流も活発で、冷泉荘の賑わいの源です。入居者さんの紹介は月1回発行しているフリーペーパー「月刊冷泉荘」にて随時紹介しています。
さまざまな用途で使えるレンタルスペース
冷泉荘の1階ではレンタルスペースを運営しています。目的に沿って借りる広さを選ぶことができ、ギャラリーとしての展示や数人でのミーティング、発表の場、ポップアップショップ、マルシェイベントなど様々なシーンでご利用いただけます。何かを始めてみたい方、ぜひお気軽にお問い合わせください。 (※詳細は:レンタルスペース申込について)
ユニークな常駐の管理人さんが入居者さんや利用者さんをサポート
冷泉荘1階にある事務局に、管理人さんが常駐。毎日冷泉荘を隅から隅までお掃除し、きれいな環境を保ってくれています。それに加え、新しい入居者さんのサポートや、入居後の日々のお困りごと、レンタルスペースの利用者さんには、準備や広報などをサポートしてくれます。
公式サイト
入居者さん情報やレンタルスペースでのイベント、管理人の冷泉荘日記など、冷泉荘にまつわる情報を日々発信中!
冷泉荘のあゆみ
冷泉荘のこれまでの歩みを振り返ります
年 | できごと | 内容 |
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1958年 | 冷泉荘誕生 | 不動産経営会社「吉原住宅有限会社」(設立1965年)が冷泉荘を取得。運営スタート。 |
2000年頃 |
老朽化により、空室が目立つようになるにつれ、建物自体もスラム化。まちのブラックスポットに。 |
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2006年 | 冷泉荘一棟コンバージョン “実験期” |
山王マンションでの経験を活かし、吉原住宅は一棟まるごとオフィスビルへコンバージョンに着手。まずは若手アーティストに向けたプロジェクト(期間3年間)を実施。 |
2009年 | 第4回福岡アジア美術トリエンナーレの 街なか会場に |
若手アーティスト向けプロジェクト終了後、一棟まるごと空室になったタイミングで、古い建物を活かすかたちで、福岡アジアトリエンナーレの会場として提供。様々な展示がされ、福岡のアートやカルチャー発信の拠点としての可能性を見出す。
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2010年 | 冷泉荘一棟コンバージョン “「リノベーションミュージアム冷泉荘」誕生” |
実験期と準備期間の4年間を経て、現在のビルストックの活用を基本理念とした「リノベーションミュージアム冷泉荘」がスタート。築 100 年を目標に「ひと」「まち」「文化」が集まるビルをコンセプトに掲げた。
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第一回冷泉荘ピクニックを開催 |
リノベーションミュージアム冷泉荘のお披露目として、各アトリエがオープンになる「冷泉荘ピクニック」を2日間にわたり開催。以降年に1~2回オープンアパートイベント「れいぜん荘ピクニック」として定期開催
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2011年 | 博多松囃子・稚児舞の奉納を受ける |
博多のお祭り「どんたく」の起源ともいわれ、1179年に始まった「博多松囃子」の稚児舞流(国無形民俗文化財)の奉納を初めてお受けすることとなり、冷泉荘前で舞をご披露いただく。以降、毎年冷泉荘にて舞の奉納をお受けしている。
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耐震補強&大規模改修工事実施 |
築100年を目指し、耐震補強工事と大規模改修工事を実施。それに伴い、使い勝手の悪い間仕切り壁を取り除くなどして、建物全体利用の最適化に着手
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シェアオフィス「THE SHARE 冷泉荘」 オープン |
4.5畳の各ワークスペースと共用部からなる、シェアオフィス「THE SHARE 冷泉荘」(現「引力の間」)をオープン。働き方が多様化する中で、スタートアップや異業種との交流のあるワークスペースの提案を試みた。(2019年4月終了)
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2012年 | 第25回福岡都市景観賞・活動部門において 部門賞を受賞 |
福岡市民の景観に対する意識を高め、まちへの愛着を深めてもらうために創設された「福岡市都市景観賞」(昭和26年創設)の活動部門において部門賞を受賞。(※部門賞とは地域の魅力を高めている企画や活動に贈られる賞) |
2014年 | 第5回福岡アジア美術トリエンナーレの 街なか会場に |
2009年に続き、今回は冷泉荘の1室を福岡アジア美術トリエンナーレの会場として提供。期間中、インドの作家Prabhakar Pachpute(プラバーカル・パーチュプテー)さんによって、木炭のドローイングによるインスタレーションが制作される。
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2016年 | 裏外壁の補修工事実施 |
外壁改修工事において、57年生きてきた姿をそのまま残したいという想いから、軍艦島の保全にも検討されているという特殊コーティング材を採用した「保存」的な改修を実施した。 |
2017年 | 冷泉荘屋上にて「たのしイネ」実施 |
天神パークビルにて2011年からスタートした都市で稲と触れ合うプロジェクト「たのしイネ」プロジェクトを冷泉荘の屋上で実施。例年以上の豊作となり、ビルの屋上活用の可能性をまたひとつ見出した。 |
2018年 | 築60年記念トークイベントを開催 &記念グッズを作成 |
冷泉荘築60年を祝うイベントをれいぜん荘ピクニックの中で開催。あわせて、築60年記念として冷泉荘オリジナルスリッパと湯浴みタオルを制作。 |
2019年 | 冷泉荘屋上にて「夕涼み会」を開催 |
夏の終わりの屋上にて、持ち寄り食事会や、FUKUOKA ART NINJAさん特製「ランタン・ツリー」の点灯、屋上卓球大会などを開催。50人を超える方々がご参加。 |
2020年 | 屋上防水工事実施 |
屋上全面をウレタン塗膜防水(通気緩衝工法)を実施。工事は冷泉荘の裏庭側の外壁改修防水塗装工事をしていただいた、軍艦島の保存にも名乗りをあげている株式会社MBSさん。(工事の様子>>「冷泉荘屋上、ウレタン塗膜防水工事いたしました。」) |
2021年 | 「冷泉荘YouTubeチャンネル」開設 |
冷泉荘の入居者さんやイベントの紹介を行うYouTubeチャンネルを開設。管理人杉山自らが撮影・編集を行う。 |
2024年 | 国登録有形文化財に登録される |
12月3日付けで文部科学省告示により、文化財登録原簿に登録される。民間事業者を建築主とした戦後初期のRC造民間集合住宅としては全国初。 |
冷泉荘建物概要
項目 | 内容 |
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所在地 | 〒812-0026 福岡市博多区上川端町9-35 |
交通 | 福岡市営地下鉄中洲川端駅5番出口より徒歩5分 西鉄バス川端町博多座前徒歩5分 冷泉公園と川端商店街の間の細い路地に入る |
構造 | RC造地上5階地下1階建て |
築造年月 | 1958年7月 |
総区画数 | 25室(事務局・レンタルスペース含む) |
設備 |
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管理 | スペースRデザイン |
冷泉荘についてのお問い合わせは
株式会社 スペースRデザイン 〒810-0041 福岡市中央区大名2-8-18 天神パークビル Tel 092-720-2122 / Fax 092-720-2123