不動産会社にはふつう存在しない“学術”を兼ねた広報チームの成果とは?
スペースRデザインには、地方の地元中小企業、不動産会社にはありえないコトがいくつも存在しています。その1つである週1日しか出勤しない%社員の岩永が、もう1つのありえないことである「学術・広報チーム」という、“学術”と付いている広報チームのお2人に、その仕事の意義や成果について聞いてみました。
登場人物
- インタビューされた人
- インタビューした人
岩永:普通、多くの中小企業には広報担当はあっても、“学術”っていう担当や役割ってないですよね。これはいつごろから始まったんですか?
箱田:もともと、創業者である吉原さんが薬剤会社の研究職出身で、家業である不動産を引継ぎ、その後コンサルティング部門として立ち上げたのが、築古不動産の賃貸・工事・管理を行うスペースRデザインです。さまざまなプロジェクトを経験し、築古の建物でいろんなチャレンジをして開発した「古くても価値を高めていく手法」を発信する必要性から、勉強会やイベントを開催したりもしていて、広報は重要なポイントでした。
業界紙などへの寄稿の依頼も以前からいただいていて、吉原さんが書かれることが多かったようです。私は2014年に入社したのですが、大学修士を卒業し、論文を書いた経験があったので、書いてみては、ということで担当し始めました。入社3年目くらいのときに吉原さんと話をしていて、だったら“学術”というネーミングにしよう、と決まったのを覚えています。
△ビルオーナーと次世代を担う若いクリエーターが経年ビルからビンテージビルへと熟成させる技術を学ぶ「ビンテージビルカレッジ」
岩永:“学術”が広報とセットになることでどんな影響が?
箱田:入社後は広報を担当することになり、建物を紹介する「建物ページ」やイベントの発信などに力をいれました。それまでは、物件の担当者ごと・プロジェクトの担当者ごとにブログなどの記事や広報活動をしていて、建物ページの内容も担当者ごとに決めていました。そこにオーナーさんのインタビューをのせたり、エリアの紹介をしたりと、スペースRデザインならではの目線の内容は、広報チームができてからしっかりと載せるようになりました。物件やプロジェクトが始まる段階から把握して「プロセスから発信する」というスタイルも定着してきました。オーナーさんの個性やその建物の入居者に話を聞くことで、より建物について深く知ることができ、個性を発信できるようになったと思います。
△建物の発信として、そこに入居されている方へインタビューし、記事を作成している。
箱田:もう1つの影響は、各担当は「こういうこともあるんだな」と認識していても、社内で共有されていなかったことが、共有されて「新しい言葉」や「新しい定義」が生まれるようになりました。それがまた物件をより詳細に分析できるようになり、オーナーさんへの提案にも活かされるようになります。
設立からしばらくは、住宅系の部屋を中心に紹介・プロデュースしていたのですが、2016年ごろから住居の部屋でも事業系やSOHOの入居相談が増えてきている傾向を不動産マネジメント課のスタッフが分析・報告してくれました。それを機に広報がまとめ、新しいタイプのオフィスを紹介する「見つけよう、“らしさ”が生きるじぶんスタイルの“シゴトバ”。」を制作しました。それによって、社内に「事業系・SOHO系の物件としても価値がある」という認知に繋がり、そのような物件のプロデュースが伸びていったことも影響の1つです。
△共有のラウンジを備えるスタジオ・オフィス「辻ノ堂ラウンジ」
岩永:そんな学術・広報チームはどんなお仕事をしているのでしょう?
新野:プロデュースのお手伝いをさせていただくことになった物件の現地へ足を運び、オーナーさんに「建築した頃のこと」「まちのこと」「オーナーの物語」などインタビューして、それを建物の歴史として蓄積し、発信していくためのWEBや印刷物をつくる仕事をしています。
箱田:蓄積されたデータやアーカイブから、どの物件でどんなことが起きているか、共通点はないかと分析しています。また、ホームページも分析して改善点を発見したり、ページごとの傾向を分析して、より良い情報発信が行えるよう修正・改善を行っています。他にも、大学での講義や学会でのプレゼンテーションをしたり、原稿依頼があれば、論文を書いています。
△九州産業大学の吉原の講義でゲスト講師を担当することも
岩永:そんな仕事で成果を出すためにこだわっていることって?
新野:何事も興味を持って観察するようになりました。小さい頃は画家になるって私言っていて(笑)。今でも美術館に行くのが好きで、作品を見ながらその作品が出来上がる背景を探るのが好きなんです。同じように、まちの広告を観察したり目の前で起きていることの背景を探るようなクセができ、それが仕事に活かされています。
箱田:ひとつの案件を詳しく分析するのと合わせて、もう少し一歩引いた目線で「この案件はどういう位置づけになるのか」を見るようにしています。そのために、オーナーさんのことや建物で起きていることを、なるべくデータ化して、アーカイブとして残せる・蓄積できるようにしています。それとともに、そのときに社会や地域では何が起きているのか?も紐づけて考えることで、社内外に関わらず、人がどのように意思決定をしていくのか、文脈を探るようにしています。
岩永:そんなお2人は仕事の楽しさややりがいをどんなところに見出している?
箱田:観察・分析して、それを新しい仮説にしたりまとめたりする仕事なので、モヤモヤした「これってなんでこうなったんだろう」と思うことが、分析したり実証してみて繋がったときに「晴れた!」というスッキリした気持ちになります。すごく気持ちがいい!そして、それを言語化・見える化することで、同じようなことで悩んでいる方々に届けられたときは、とても嬉しいです。
新野:視察対応をしたり、記事を出したりして、それがキッカケで日々様々なオーナーさんと接したりもしますが、その経験をもとに「動き出すオーナーさん」がいるんです。そうやって新しいアクションが見えたときは楽しいなー!と思います。
△視察でこられたかたに、冷泉荘などの事例案内も担当
学術・広報チームは会社のアイデンティティかも
弊社スペースRデザインでは、築古不動産の賃貸・工事・管理などの経営支援を行う会社です。通常は築年数とともに価値が劣化していくと思われていた不動産の常識の中に、様々な取り組みを経て「価値が向上する取り組み」を見つけ出し、名前を付けて発信してきたスペースRデザイン。学術・広報チームは、まさに会社のアイデンティティの肝になっているのだなーと改めて感じました。
以上、岩永がお届けしました!