時代とともに変化し生き続ける、住環境の実験住宅
一宇邨の名前には「一つ(一)屋根(宇)の下にある村(邨)のような」という意味がこめられています。高度経済成長の中、住まいが大量供給されていく中で失われた「他者との関係から得られる豊かさ」を再考したいという想いから、設計された住まいです。
暮らしを形づくるとは、誰とどう過ごすを考えること。
一つ屋根の下での生活では、「自分の望むこと」と「相手の望むこと」にそれぞれ折り合いをつけ、互いに尊重しあわなければ成立しません。住人同士で話をする中で自然に様々なことを共有し、時には新しいことを知るきっかけを与えてくれます。
設計プロセス
もとになっているのは中村享一氏による「E7-project」の構想。「居心地のよい住まいをつくる」という命題のもと、重きをおいたのは建築における、再生産・再利用の循環系の課題でした。
建物が時代の変化に対応していくためには、住人の住まい方に対応できる必要があります。ゆえに、一宇邨では、設備の変更を繰り返しながら、より住み良い住宅へと進化を続けています。設計の段階においても、木炭混入の調湿機能を持つコンクリートを開発したり、2重構造で遮熱性の高いアルミ製の外壁の採用、季節によって光の入り方が変わるトップライトなど、数々の仕組みが生み出す心地よさを、肌で感じることができます。吹き抜けのリビングは建物の中心に位置し、建物内をゆるやかにつないでいます。個室でプライベートは確保しつつ、分断されない設計になっています。
谷という場所
一宇邨は、六本松を見下ろす谷という地域にあります。福岡市街を一望できる高台に位置し、海から山へ向かう風が通り抜ける音、虫や鳥の声など、自然を感じることができる地です。格式高い建物やお店が並ぶ「山の上エリア」から、学生と文化の集まる街「六本松」へ下る坂の途中に位置し、それらは先を覗きたくなる路地や階段によってつながれています。谷は、「自然」「格式」「文化」など、多様な雰囲気が混ざり合い、住む人も多様な生活をおくることができる地です。2017年9月には九州大学六本松キャンパス跡地に六本松421がオープン。民家が集まる趣をのこしながら、まさに姿を変えつつある地域です。