木造の住まいを引き継ぐ
久留米市の石橋文化センターと久留米百年公園に挟まれたエリアにはとても静かな住宅地が形成されています。エリア北側にはかつて久留米藩を治めていた有馬家の別邸があり、そのため、道の形状が直線的ではなく、大きな開発がなされなかったのでしょう。
外から簡単に入れないようにするためか、松葉ビレッジの周辺は道路が直線でないことが多い。
松葉ビレッジには、約250坪ほどの敷地に木造戸建て「松葉ハウス」が4戸と、2階建て木造アパート「松葉荘」が、向き合うようにして建っています。そして少し離れた場所にさらに3戸の「松葉ハウス離れ」があります。松葉ハウスは、戦後の住宅供給が進められた時代に、借家として建てられたものだそう。その後、同じ敷地内に松葉荘が新たに建てられ、今の「松葉ビレッジ」のベースとなる形が生まれました。
先代のご自宅には、大きな松が植わっていたそう。樹齢が長く年中緑の葉を湛える松に、松葉荘の将来を願ったのでしょうか。
ここで生活される方々の暮らしが、まちの営みが、心地の良いものになるようにと。
「松葉ビレッジ」として再スタート
先代から建物を受け継いだ現在の大家さんは、鉄筋コンクリートの建物が主流になるなかで、木造のよさや昔ながらの建物の味を活かした住まいづくりをすることを選択。ひとりで管理をおこなう傍ら、2018年より部屋づくりにチャレンジされています。
周りの力を借りながらDIYでリノベーションに取り組まれており、ここに至るまでに勉強会や見学会に参加したり、友人・知人に相談したり。汗水流しながら努力と勉強を重ね、大家さんとして日々成長されていく姿はとてもたくましく輝いてみえます。
またそんな姿を見ていた入居者さんが自主的に草取りや植栽の手入れをしてくれるようになったり、ご近所の方との会話が増えたりと、新たなつながりも生まれてきました。
「ここがあることで、周辺エリア(の雰囲気)が明るくなるような、そんな場所にしていけたらいいなと思います」
そうお話されていた2018年の「松葉ビレッジ」再スタートから数年、その輪郭が少しずつ鮮明になってきています。
2022年、敷地の最前面で松葉ビレッジの顔ともいえる「松葉ハウス1号」にカフェがオープン。これまで住居として使われてきた戸建ての新たな可能性が開かれました。「地域の人たちが日常の一コマで訪れることができて、人のつながりが生まれるような場所になってほしい」という大家さんの願いが、縁を引き寄せたのかもしれません。
さらに同年、松葉ビレッジより徒歩5分ほどの場所にある久留米市中央公園の芝生広場がリニューアル、「Cafe & Studio KURUMERU」がオープンしました。周辺エリアが徐々に活性化しており、地域に賑わいが生まれつつあります。
たった一人手探り状態からはじめたことが、いつしかたくさんの仲間とともに。
ひとつふたつと形になってきました。
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | 福岡県久留米市合川町2088-1 松葉荘 |
交通 | 西鉄「久留米」駅徒歩14分(約1,100m) |
構造/築造年月/総戸数 |
|