1977年に誕生し、今年で築49年を迎える新高砂マンション。
2004年から始まったリノベーションの歩みは、「高砂女子R(2008)」や耐震補強工事(2011)などのハードの再生、そして「リノっしょ(2011〜)」、「清川ロータリープレイス(2016~)」、「インターン部屋再生PJ(2022~)」といった、まちや次世代にひらく試みへと広がってきました。
そしてこのたび、残り少なくなった既存部屋の中の2室(401号室・601号室)にて、新たなリノベーションプロジェクトが進行中です。
今回は次世代を担う建築家(吉村さん・星田さん)をデザイナーにお迎えした協働プロジェクト。工事費が高騰する中で、これからの賃貸不動産のあり方と、心を動かし共感を育むデザインや思想をいかにして追求、実践するのか。実際のリノベーション現場から学び、試行錯誤のプロセスを社会へと発信できればと思います。
今回は、401号室を手がけた建築家・吉村 有史さんに、空間に込めた想いや設計のプロセスをお聞きしました。
401号室 デザイナー紹介
吉村 有史氏
一級建築士
1995年福岡県久留米市生まれ。2020年九州大学人間環境学府卒業。2020年株式会社オンデザインパートナーズ入社。横浜にて建築設計やまちづくりの経験を積む。現在は地元に戻り、同会社で九州の案件を中心に従事しながら、九州大学にて古代ローマ建築に関する博士論文を執筆中。
建築家・吉村さんが見つめた、新高砂マンションの魅力
401号室の設計を担当した吉村さん。初めて新高砂マンションを訪れた際、直方体の一般的なビルとは異なる「各住戸が雁行(がんこう)するように配置された平面計画」に強く惹かれたといいます。
「一般的な直方体の建物とは異なり、各住戸が雁行するように配置されている点がとても特徴的だと感じました。そうした平面構成によって、多くの住戸が二面採光を確保でき、室内に光や風を取り込みやすいことも、この建物ならではの魅力だと思います。
リノベーションでは、こうした既存建物がもともと持っている特徴を活かしながら、室内の居場所同士のつながりをつくっていきたいと考えました」
コンセプト「ひとつながりの住まい」
401号室のテーマは「ひとつながりの住まい」です。
既存住戸は、同程度の広さの空間がふすまで仕切られた構成でした。吉村さんはそのふすまを取り払い、代わりに「棚」や「独立した木壁」、そして「床の段差」といった緩やかな境界を配置しました。
同程度の大きさの空間が重なる既存の構成を、一人暮らしや二人暮らしの生活にあわせて組み換え、リビング、ダイニング、寝室、書斎といった居場所に、それぞれ異なる広がりや性格を与えています。
居場所を完全に閉じるのではなく、それぞれが緩やかに重なり合うことで、日々の過ごし方がひとつの暮らしの風景となる住まいを目指しました。
コストへのアプローチと、空間の余白
設計段階では明確な住まい手が決まっていない賃貸住宅だからこそ、「使い方を見つけられる余白」を大切にしたと語ります。
「既存のプランから着想しました。キッチンや水回りの位置の変更はコスト増につながるため、基本的な配置はできるだけ活かすことを前提に考えています。
そのため、キッチン、ダイニング、寝室といった居場所の位置そのものを大きく変えるのではなく、それぞれの広さや境界、つながり方を調整することで、現代の暮らしに合ったあたらしい住まい方へと更新することを考えました。
設計の段階では、実際に住まわれる方が決まっていないからこそ、特定の暮らし方に合わせすぎるのではなく、住む人それぞれが使い方を見つけられる余白を残すことを意識しています」
「廊下」から「居場所」へ
ぜひ見てほしいポイントは「それぞれの居場所のつながりです」と吉村さん。
これまで移動の場であった廊下は幅を広げ、寝室との境界となる棚を設けることで、書斎や趣味の場としても使える居場所へと生まれ変わりました。
さらに、キッチンとダイニングは独立した木壁によって緩やかに分けながら、その壁や家具の連続によってダイニングからリビングへと空間をつないでいます。
ワンルームとしての広がりを確保しながら、住む人によってさまざまな過ごし方ができる設計です。
「広い空間でゆったりと過ごせる場所だと思います。
思い思いに好きなインテリアを楽しみながら、過ごしていただければと思います」
―― 設計:吉村 有史氏(一級建築士)
スペースRデザイン しんの
【11月7日(土)完成見学会 & トークイベント開催!】
吉村さんが手がけた401号室、そして星田さんが手がけた601号室の完成見学会を開催します。当日は自由にご見学いただけます。
■ 完成見学会
日時:2026年11月7日(土)10:00~14:30
場所:新高砂マンション(受付:401号室/申込不要)
■ トークイベント
日時:2026年11月7日(土)15:00~16:30
テーマ:「暮らし・しごと・まちの受け皿としての賃貸の可能性」
デザイナーの吉村さん・星田さん、信濃先生(九州産業大学教授)をお迎えして、リノベーションやストック活用について語り合います。
▶トークイベントの詳細・お申し込みはこちら





