山口県の南東部に位置する田布施町。お米や野菜といった農産物や桜などの豊かな自然、そして古墳や史跡も多く存在する歴史あるまちです、
先日、田布施町で地域活性化に取り組む田原さんにご案内いただき、視察に伺いました。田原さんは、弊社代表吉原が客員教授を務める「地域未来創造大学校・次世代まちづくりスクール」吉原研究室「吉原ゼミ」のゼミ生です。普段は、地場の工務店で働かれているのですが、田布施の空き家問題をどうにかしたいと「ともそうや(友創舎)田布施」という団体を立ち上げ、空き家を管理し、次につなぐ活動をされています。2021年、田原さんはご自身の活動について、吉原ゼミにて学んだことをもとに「4ヵ年計画」を作られました。今年がその4年目にあたり、「結末を見に来てほしい」という趣旨で、田原さんが企画してくれたのが今回の視察でした。
△今回の視察のために田原さんが創られた冊子と田原さんが運営する「田布施Turns」のチラシ
△田原さん作・ウェルカムボード
田原さんの取り組みについては、以前より吉原からきいており、場所も同じ中国地方の山口県の事例というのもあり、全体で2日間の視察スケジュールのうち、1日目に参加させてもらいました。
視察1日目では3つの取り組み事例を紹介してもらいました
①Agri Campus
とうもそうや田布施にて管理する農地と建物。どちらも所有者と田原さんとの信頼関係の下、管理費と賃貸料を相殺する形で、子供の遊び場や土に触れることを体験できる場として運営されています。
△この日のお昼は、AgriCampusにてバーベキュー。地元の方が獲れたての猪肉を差し入れしてくださいました
△手作りの漆喰ピザ窯で焼いたピザもご馳走になりました
②地元企業社員寮
地場企業の社員寮なのですが、何やら見たことあるような…。そうです。基本平面は旧日本住宅公団が初期に建設した「スターハウス」にそっくり。それに加え、住戸と住戸のあいだのスペースにさらに居住スペースを付け足されている、独特な平面の建物でした。これはどういう経緯で建てられたのか…とても気になる建物でした。
③竹重すてき庵
こちらも田原さんがオーナーさんより管理費と賃料を相殺する形で利用・運営している住宅です。管理を依頼される前からきれいに維持されていて、オーナーさんはとても家に対して思い入れを持たれている、だからこそ、いい方にはいっていただきたい、それまでのつなぎ役として、地域のためになる形で活用しながら、管理維持をしている。田原さんはご自身のことを「空き家番」と表現されていました。
田原さんは月に1回、オーナーさんに管理レポートを届けられています。それはただの報告書ではなく、「地域の方からこの家に関するこんな話をきいた」「この家はこういう過ごし方をすると気持ちがいい」といった、田原さんが発見した「家のいいところ」をつめこんだラブレター。これをもらったオーナーさんはとても喜ばれ、このやり方は間違っていないと自信をもてたと田原さんはおっしゃっていました。
視察の最後は吉原ゼミ生らしく「勉強会」。田原さんより、4ヵ年計画を作成して以降の報告と、目指すもの、2025年に集大成として開催する「田布施空き家ばんぱく」の紹介がありました。
△田原さんが勤める工務店のモデルハウスにて
田原さんは工務店で得たスキルと知識で、田布施町に増える空き家をAgri Campusや竹重すてき庵のように、管理しながら「空間資源」として活用し次の方へバトンタッチする「空き家番」という役割をつくることで、お金をかけなくても建物の価値向上を計ることにチャレンジされています。そしてゆくゆくは、そのスキルを公開し、多くの「空き家番」を育てることで、空き家は未来につながる空間資源となり、暮らしに豊かさをもたらしてくれるというビジョンを描かれていました。
△田原さん
とても熱意をもって地域課題に取り組む田原さんですが、それに至るきっかけや影響を受けたのは、同じく田布施で想いを持って活動する方々でした。勉強会にはその方々も参加されており、改めてお互いに想いを共有する場となりました。
△田布施町まるごと公園化プロジェクトの田川さん
△田原さんが勤める工務店の高月さん
△視察で伺った社員寮に住まわれている吉田さん
△田原さんの同僚水本さん
△懇親会にて
よく、「物事を続けるには事業性が必要」といわれますが、田原さん曰く「まだ事業性はゼロでそこが課題」。一方でわたしが感じたのは、事業性がなくても、きっとそれぞれの想いでこの活動は形を変えながらも続いていくだろう、むしろ事業性がない方が田原さんらしい(無責任ですが…!)ということ。なぜなら、お金というかたちでの収益はないかもしれませんが、別の形でたくさんのものを得ていて、だからこそメンバーが集まっているのではと感じたからです。
そして視察全体に、田原さんの「人を楽しませたい」「楽しいことをしたい」といお人柄が伝わってきました。田布施を愛する気持ちと田原さんのお人柄、そして田原さんのスキルがかけ合わさって、「ともそうや田布施」の取り組みが誕生したのだと思いました。
わたしの住む福山にも空き家はたくさんあります。ただ、事業性を考えるとなかなか手が出せない。でも今回、田原さんの取り組みや考え方を知って、なんとなく自分の中に一本の道が見えたように思います。時間はかかりますが、自分のこれまでのバックグラウンドを大切に、一歩一歩進めていきたいです。