築30年目を迎えた「シェアハウス 一宇邨」にて、外壁塗装ワークショップが開催されました。一宇邨は、建築家でありオーナーの中村氏が実験住宅と位置付けて建築された建物で「構造・機能ともに50年もたせる」ことを重要なポイントに運営されています。
今回、外壁コンクリートの長寿命化を目指したメンテナンスとしてオーナー中村氏が選定された方法は、ポゾリス社製のプロテクトシルという高分子塗料をコンクリート表面から含浸させる(染み込ませる)方法です。面積に対し規定量を塗ることで約70ミリの深さまで浸透していき、鉄筋の腐食抑制と、コンクリート表面からの水分侵入を完全に防ぐ役割を果たします。
ワークショップはこの塗料を外壁にコツコツ塗っていくという作業でした。参加者さんは、不動産オーナーさんや建築関係の方など10名ほどの方々。お集りいただいた皆さま、ありがとうございました。
まずはじめに、太田さん(ポゾリス社)と根路銘さん(建築家/コンクリート研究者)に、塗料について勉強会を行っていただきました。
鉄筋コンクリートが劣化していく要因と、それを防ぐ方法についてお話を伺いました。コンクリート内部が中性化すると劣化が進みやすい環境となることはよく知られていますが、近年の研究にてそこに水分が浸入すると劣化が進行することが明らかになってきたそうです。
勉強会の後、塗装する場所の面積から塗料の量を算出、計量していきます。
左:根路銘さん(建築家/コンクリート研究者)と右:太田さん(ポゾリス社)。根路銘さんは沖縄で建築設計のお仕事をしながら、東京理科大で建築素材の研究をされています。太田さんは全国各地を飛び回り、素材の使い方や良さを多くの人に伝える取り組みをされています。
塗料は無色透明でした。
塗り方のレクチャーを受け、いざみなさんで塗装開始です。
担当する面に対して、規定量を塗装していきます。
一度染み込んで、表面が無色になったら再度上から塗り重ねます。コンクリートの状態によって中に染み込んでいくスピードが異なるため、場所によっては何度も塗り重ねました。
塗装した直後
数分乾燥すると塗料が中に染み込み、元のコンクリート色に戻ります
もくもくと作業したり、すこし話したり。ワークショップにはいろんな専門家の方が集まっていたので、みなさんとの情報交換がとても有意義な時間となりました。
お昼はご近所のお弁当屋さんにお願いしました。美味しいのはもちろん、発酵食品が体に優しくてみなさん大満足でした。ありがとうございました。
建物のメンテナンスは専門の会社さんにお願いするのが一般的になっていますが、そもそも自分たちでできるメンテナンスがあるということを学びました。そしてそれを続けていくことで、自分たちで建物を守っていく意識が生まれるのだと思います。
お部屋のDIYをするとそのお部屋に自然と愛着が生まれるのと同様に、手を入れた分、その場所を想う。とても素敵な時間を過ごさせていただきました。
今回、外壁塗装前にオーナー中村氏自ら外壁の高圧洗浄を実施されました。
使う素材、施工方法などハード面での持続可能性、そして住人さんや関わる人たちの心地良さをソフト面から追求する実験住宅 一宇邨。今回の大規模修繕においても、一宇邨の思想が体現されていました。
30年目のメンテナンスを経た一宇邨が、これからどのように進化していくのでしょうか。実験住宅の未知なる姿を間近で見て、学べることを、幸せに思います。
スペースRデザイン 新野