2003年福岡初の賃貸リノベーションに取り組んだ山王マンション(1967年築)にて、10年ぶりのリノベーションプロジェクトが進行中です。今回リノベーションをおこなっているのは301号室と608号室。1室は山王マンションのリノベーションを初期から手掛けられてきた信濃先生、もう1室はスぺースRデザインの吉村が担当しています。山王マンションとしては全45室中33室目のリノベーションです。
またこのプロジェクトは、「山王R2023リノベーション研究会」としてリノベーションに関わるいろんな過程を共有・発信しながら、月1回の勉強会を通して参加者のみなさんと一緒に「リノベーションとはなにか」を学び合う試みをおこなっています。
私たちにとっては、100年経営を目指す山王マンションの歴史を紐解きながら、「築56年現在の山王マンションのリノベーションのあり方」を考え、見出す取り組みでもあります。
2023年11月、第一回の研究会にて現地見学・リノベーションコンセプトの共有をおこない、プロジェクトが始動しました。
2024年1月に解体工事がスタート。現在は、九州産業大学信濃研究室のみなさん、施工業者さん、入居者さんなど多くの方にご協力をいただきながら、3月中旬の完成に向けて工事が進んでいます。
このマガジンでは、リノベーションについて考える&つくるプロセスを開く試みの一つとして、リノベーション工事の過程を記録したいと思います。今回は入社以来1室目のリノベーションとなる吉村担当の608号室について、解体、大工工事の現場までを記録します。(301号室については、別のマガジンで報告予定です。)
工事前の山王マンション608号室。朝日が気持ちよく差し込む。
608号室のコンセプトは「朝のきらめき」。南東向きの最上階にて朝日に包まれながらのびのびと過ごす暮らしをイメージし、2DKから1DKへ間取りを変更して広々とした畳空間を設定しています。
設計の段階では、コンセプトを軸に暮らし方をより細かく想定し、いろんなものの要素を調整。新しいものを付加したり、逆にそぎ落としたりする作業をおこないました。コンセプト段階で想定していた初期図面の内容から、入居者さん像に合わせて畳の範囲を当初より小さくし、新たにサイザル床(麻素材のカーペット)の範囲を設定。また、空間の仕切り素材を検討しました。入居者さんがお部屋をどんな風に使っているか一番よく知っている、管理人の大山さんからもアドバイスをいただきました。
設計の計画が決まり、施工業者さんとの打合せや見積もりを経て、いよいよ1月に解体工事が着工しました。残す範囲と撤去する範囲を打合せし慎重に進めていきますが、解体してみないと内部が分からないことも多く、実際は解体を進めながら現場で判断していきます。お部屋の表装を撤去していくので、山王マンションで多く使われているブロック積みなどがあらわしになり、オリジナルの歴史が一番垣間見える工程です。
解体範囲のメモ書き。
解体開始。古い建物はモルタルが厚く塗ってあることが多い。
床(畳)も撤去。そのまま使用できる床下地組は残す。
排水管は新設し、外部の縦配管へ接続。
解体完了。
解体が終わると、大工工事に入ります。床、壁、その他造作部分の工事です。
新設する畳部分の下地。
畳を囲む床部分の下地造作。
リビングの床下地造作が完了。
針葉樹合板を用いた棚板造作。
キッチン側の様子。
大工工事が終わると、左官、塗装工事と、完成に向かって進んでいきます。
続きはまた次回のマガジンをご覧いただけたら嬉しいです。
スぺースRデザイン 新野
「山王R2023リノベーション研究会」これまでの開催レポート
山王R2023リノベーション研究会 第1回レポート
山王R2023リノベーション研究会 第2回レポート~解体を詠む~