7月初旬、吉原、箱田、井上、新野にて広島県三原市・福山市を訪れ、ストック活用の実践事例を見学させていただきました。
三原市ではJR呉線・須波(すなみ)駅のそばで、元JR社員寮の再活用プロジェクトが始まっています。そのプロジェクトを進められている「株式会社まちづくり須波」の三原さん(建築士)と、代表吉原が担当させていただいている関西大学の講義でお会いしたご縁から、今回の視察が実現しました。
三原さんは、冷泉荘と山王マンションを見学に来ていただいたこともあり、今回は私たちの方が三原さんの活動拠点を見学させてもらうことができ、とても嬉しく貴重な一日でした。
あわせて、福山でリモート勤務のスタッフ・箱田の活動拠点も訪ねました。
今回見学させていただいたのは3つの物件です。
①元JR社員寮の活用プロジェクト「SHARE宅 須波」 @須波駅
②元百貨店利活用プロジェクト「iti SETOUCHI」@福山駅
③「いとま堂」Ki-CHi内 @福山駅(箱田の活動拠点)
①元JR社員寮の活用プロジェクト「SHARE宅 須波」 @三原市須波
JR須波駅の無人化に伴い数年前に空き社宅となった団地の再活用プロジェクトです。株式会社まちづくり須波がJR西日本より借り受け、地域の新たな活動拠点として企画・使い手を募集されています。
(プロジェクトの詳細>>>「JR旧社宅をリノベーションした地域インキュベーション施設「SHARE宅須波」入居者の募集を開始しました」)
区画内は改装自由。瀬戸内海が見渡せる眺望がとてもすばらしい環境でした。
驚いたのは、区画内に給排水なしの条件で募集されているにも関わらず、すでに十数件のお問合せが入っていることです。建物全体として上下水道の整備に多額な改修費用がかかるため、区画内は給排水なし、トイレは共用でプロジェクトを始めることにされたそうです。
きれいに整えてから始めるのではなく、整えていく過程に共感してくれる人たちと建物を育てていくことを選ぶ。三原さんからは、「建物の管理運営に一緒に関わってもらいながら、須波のまちを大切に想い、新しい活動を始めたいクリエイターの方々に集まってほしい」という熱い想いを伺いました。
現在、三原さん達の拠点兼コミュニティスペースとなるお部屋をDIYで改装中とのこと。入居者さんが活動を開始され、建物が新たに動き出し、まちにひらいていかれるのがとても楽しみです。
また、JR西日本の内藤さんにもご一緒いただき、お話を伺いました。内藤さんは、全国各地で様々な活動の事業化や持続的な運営の仕組みづくりなどをされている方。須波のプロジェクトについても、三原さんと一緒に取り組まれています。大きな組織の中で、ご自身の視点と専門性を活かしてまちに新たな仕事を生み出されている姿にとても感銘を受けました。
②「iti SETOUCHI」元百貨店活用プロジェクト @福山市
福山駅から徒歩8分ほどの元百貨店の建物を、福山電業株式会社さんが運営事業者となって利活用されているプロジェクトです。ニュースでも取り上げられており、ご存知の方も多いことと思います。
(「iti SETOUCHI」WEBサイト)
元百貨店とあって床面積もとても広いですが、コンセプト「みんなの希望をつくる場所」「作る人を増やす」がすみずみまで表現されていました。
ゾーニングにおいては「ものづくり工房」をはじめに整備し、ここを拠点に館内のいろんなものを制作できるようにしたり、デザインにおいては工事用テントをフラッグやサインに利用していたり。運営担当の谷口さんより館内のご説明をいただきました。冷泉荘でいう、ディレクター/管理人の杉山のような役割をされているのかなと思いながら。
現在は1階のみの運営ですが、今後は2階の活用も開始する予定とのことです。
伺った日はレンタルスペースで企業の方々が展示会を開催されていたり、カフェでは高校生が勉強していたり、多様な世代の方が思い思いに施設を使っている風景が印象的でした。
この大きな規模の中での、ビジョンを体現する運営の仕組みや日々の管理体制づくりなど、学ぶべきことが多くありました。また次回に、管理体制の設計などお話を伺いたいです。
③「いとま堂」Ki-CHi内 @福山駅(箱田の活動拠点)
最後に伺ったのは、福山市「とおり町Street Garden(本通・船町商店街)」内にある「Ki-CHi」さんです。ここには、箱田さんの拠点「いとま堂」が入居しています。
([プレスリリース]福山本通商店街に新拠点 クリエイティブスペース「Ki-CHi」誕生!)
元履物屋さんだった建物を、クリエイティブスペースとして再生している物件。事務所スペースとレンタルスペース、キッチンスペースがゆるやかに共存していて、まちと建物に合った、とても自然で心地良いかたちで活用されているように感じました。
箱田さんは、事務所スペースをシェアして借りられています。ZINE販売のほか、来訪者の方はここでZINEづくりもできるそうです。将来的には、商店街の方々と連携した取り組みもしてみたいと考えられているとのこと。
いとま堂さんの活動はこちら>>>いとま堂 instagram
(写真提供:Ki-CHi)
普段はリモートで一緒に仕事をしている箱田さん。元々は知らない土地で人とのつながりを育て、根を張り、こんな素敵な拠点をつくられて、その過程できっといろんな大変なことがあったのだろうと思います。福山での取り組みの話を聞く機会は少ないのですが、これからはもっと現地での活動のお話を聞きたいと思います。
地方のまちのストック活用において大切なこと
建物を完全に整えてから始めるのではなく、まずは現状でできる範囲でプロジェクトを始める。そして関わる人たちと一緒に建物を育てていくという考え方は、地方のまちでのストック活用の手法として大切な姿勢だとあらためて感じました。その再生の過程に共感し、自分も一緒に何かできるかもと感じて協働する人が集まってきていました。
特に須波駅のプロジェクトでは、再生過程を開きながら進めるプロジェクトを建築士の方がされているということにも、大きな意義を感じました。建築の専門知識を持った方がまちづくりに関わることによって、法規面や設備面のハードルをクリアしながら、多様な人たちの意見をまとめながら形に落とし込んでいくことがよりスムーズになります。リノベWEEKメンバーである村田建築士(熊本県玉名市)の「何をつくるかより、どうやってつくるかが大切」という言葉を思い出しました。まちづくりの視点を持った建築士の方の存在が、今後ますます必要とされてくるのだと思いました。
あらためて、広島でご案内いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
三原さんは、11月開催予定の九州DIYリノベWEEKでお話いただけることになりそうで、プロジェクトのその後をお伺いできるのがとても楽しみです。みなさまもぜひ、お話を聞きにいらしてください!
スペースRデザイン 新野
