「DIYを作業から文化へ」をテーマに、2019年10月よりスタートした「山王文化DIYプロジェクト」。
全4回のワークショップ、リノっしょ(入居者と管理会社が一緒にDIY)を経て、お部屋が完成し、
1月よりご入居されています。
入居者Sさんに、山王文化DIYプロジェクトに取り組まれたきっかけやDIYの本音、住んでからのことなど、いろいろお話しを伺いました。DIYによるお部屋再生の過程を振り返るとともに、賃貸不動産と山王文化DIYの関係性について改めて考えてみたいと思います。
山王文化DIYでつくりあげたお部屋。ご入居後、特別に見せていただきました。
目次
- 山王文化DIYとは
- 山王文化DIYプロジェクトのはじまり
- 【解体】「残す部材」は解体DIYの現場で決定
- 【デザイン決定&DIY】自分のライフスタイルを形に(後編)
- 【DIYの実際は?】DIYへのハードルは、サポートメニューを活用(後編)
- 【完成後、暮らしてみて】暮らしと心境の変化(後編)
- 賃貸と山王文化DIYの関係性(後編)
山王文化DIYとは
築古不動産の一室と、「自分の暮らす空間を自分でつくりたい」という想いを持つ入居希望者を結び付け、お部屋作りDIYのサポートを行うことで、新しい賃貸文化の醸成と暮らしの充実を目指すプロジェクトです。
水廻り交換や電気工事(最低限ベースとなる工事)はオーナー側で実施し、以降の造作(床貼りや壁塗りなど)を入居者さんのDIYにて実施。
入居者さんのDIYのうち、デザイン、DIYの方法や材料の調達など、難しい部分はスペースRデザインがサポートするメニューもあります。
不動産オーナーとしては、リフォームやリノベーションをしないと賃貸市場に出せない古い一室に対して、リノベーションほど大きな投資をせずにお部屋を貸し出しすることができ、また建物のブランディングに繋げることができる
入居希望者としては、「今ある空間では満足できず、自分の理想の空間を自分の手でつくってみたい」という想いを“賃貸”で実現できる
管理会社としては、「“築古不動産”と“自分の暮らす空間を自分でつくりたい入居者”を結び付ける」という新しい仕事の領域を生み出すことができる
上記三者にとって、大きな価値があるのではないかと考えています。
そしてこの取り組みにより、建物を大切に使い歴史を後世に引き継いで行くことで、将来的にそのまちの価値向上にも繋げていけるのではと考えています。
山王文化DIYプロジェクトのはじまり
2003年、福岡ではじめて賃貸マンションのリノベーションに取り組んだ建物と言われる山王マンション(1967年築)。
現在では全45室中30室がリノベーション実施済。数々のリノベーションプロジェクトの舞台となり、先進的で実験的な取り組みに挑戦してきました。
そんな山王マンションで、久しぶりに建築当時の仕様のお部屋が空室に。
私たちは次なる築古不動産の再生手法の実験・検証を目指し、このお部屋を舞台に「山王文化DIYプロジェクト」の企画、実践に取り組むこととなりました。
山王文化DIYの舞台となった部屋の一室。建築当時の仕様がそのまま残っていた。(2019.9)
ちょうどその頃、約2年ほど山王マンションにお住まいのSさんより、
洋服類が増え収納量が足りなくなってきたことから、建物内の住み替えを検討されているとご連絡をいただきます。
そこでSさんにこのプロジェクトのお話しをしたところ、DIYやプロジェクトの仕組みに興味を持っていただき、近日中に企画していた山王文化DIYプロジェクトのスタートアップ「既存部屋再生 解体ワークショップ」に参加されることとなりました。
【解体】「残す部材」は解体DIYの現場で決定
スタートアップとなった解体ワークショップは、部屋再生DIYに興味のある方を募集。Sさんを含む10名ほどの参加者の方に集まっていただきました。
ワークショップのはじめに、山王マンションの歴史、山王文化DIYプロジェクトの仕組み、解体作業の方法を説明。そして約半日かけて、壁・天井・床などの解体作業を行いました。
参加者のみなさんにとっては、普段なかなか学びの場がない部屋再生DIYを体験でき、また私たちにとっては部屋再生DIYに興味のある方と出会うことができ、実りあるワークショップとなりました。
2019.10.5「山王マンション既存部屋再生解体ワークショップ」にて
はじめてこのお部屋を見たときは、「時代を感じた」というSさん。解体作業の中で、壁を壊しながら「どこをどう残すか」みんなで話しながら決めていったそうです。
「天井の既存下地も、玄関部分だけ残してお部屋全体のバランスを取ったり、
柱を残して動線をつくりやすくしたり、DIY作業をしながら決めていくことが多かった。
寝室の天井も既存下地を残したまま。残す残さないは、みんなで作業しながら話し合いましたね。」(Sさん)
「なにを残すか、どうすればその部材が活きるか、をかなり慎重に、大切に考えました。残して使えるものはほとんど残しています。」(Sさん)
山王マンションが歩んできた歴史や、建物全体に流れる空気感・コンセプトに共感いただいているからこそ出てくる言葉だと感じました。
そしてこのワークショップを経て、山王文化DIY部屋へ住み替えることを決められます。
「初めてプロジェクトの話を聞いたときは、どこまで自分でDIYできるのか不安もありました。棚を作るくらいのDIYはしたことがありましたが、お部屋全体の施工については素人なので。
ただ、今回がプロジェクト第一弾で、ある程度実験的要素があって楽しそうと感じました。また、DIYサポートメニューのお話しもあり、“それならなんでもできるかも”という気持ちになり、挑戦してみることにしました。」(Sさん)
ここまで、山王文化DIYのはじまりから、お部屋の解体作業までを振り返りました。
後編では、お部屋のデザインやDIYの本音、実際の暮らしについてレポートします。
スペースRデザイン しんの