学生インターンの中塚です。
ビンテージビルに価値を作り出し、それを公に開く冷泉荘。管理人の杉山さんに日々のお話を伺いました。
「すべての行いを広報につなげる」というこの場所ならではの管理モットー。その要素となる「毎日のルーティンワークをクリエイティブに行う」こと。わかりそうでわからなかったその一部に焦点をあて、身を通して感じられた日のレポートです。
ルーティンであるビルの清掃について。
共用部の掃除に価値をつけるとはどういうことかと思っていると、道具のこだわりからでした。
管理人室には役目を終えた同じ型の箒がたくさんあります。こだわりの毛並が半分くらいすり減った時の使い勝手がベストだそう。これで毎日床を掃くというよりなぞってまわり、状態や変化に気づきます。
掃き方にも熟練の一端が。上階からゴミを落としていくのが自然と及ぶ考えですが、下階から順に掃きます。降りる時に手が空いて壁や天井に目が向くためです。
丁寧に時間をかける清掃は道に面した外部でも行われ、必然的に人との交流を生んでいきます。そしてその行為自体、広報に。
実際に清掃しました。杉山さんのお話を踏まえた後では確かに建物の状態や味がよく見えました。何度も通り過ぎた階段はビンテージマンションの歴史を記すように一段一段異なり、かなりの時を感じさせる段もあったのだと気づきました。
私たちが掃いてもほとんど何も出ないほど手をかけられている建物に、古い箇所と新しい箇所が仲良さそうな温かみを感じました。私たちの企画案に出ている「愛着」に絡みそうです。
もう一つ感じたことがあります。5階建2棟の清掃は予想以上に体力を要し、手を休めてふと顔を上げた時、外の風景をじっと見てしまいました。冷泉公園を抜ける景色と風を受けるとなんとなくこのビルが60年以上この場所に向かっていたということに思いが寄りました。人が建物を感じるのはふと気が緩んだ瞬間かもしれないと思い、清掃はそこにも繋がる可能性があるのかと個人的に感じたところでした。
初めて訪れた時、杉山さんの好きなもので一杯に彩られている管理室が建物にすごくマッチしている様子が不思議でした。今回清掃という一部分に触れ建物や人の数多くの瞬間に立ち会う価値を感じ、謎が少し解けた気がします。
毎日価値が積み重なるビンテージビルでルーティンを積み重ねる。
冷泉荘に、人と建物が重なるような管理の在り方を学びました。
福岡女子大学3年 中塚 彩