天神パークビルの屋上で、屋上活用を考えるシンポジウムが開催されました。
右奥に見えるのは、2023年6月21日にオープンしたホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」(高さ約111m)。
天神ビッグバンにより高層化が進む福岡の中心街。それに対し、旧来の中小ビル群は50mの高さを揃えて残っていくことになります。
シンポジウムの目的は、天神ビッグバンというまちの変革期の中で、都市の中小ビルの屋上の可能性とありかたについて多様な目線から考えること。リッツカールトンホテルが間近に見える天神パークビル屋上のこれからの活用法も考えます。
シンポジウムには、大学の先生、不動産オーナー、建築家、まちづくり系会社の方、職人さんなど、多様な40人近くの方にご参加いただき、オンラインでも配信いたしました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
司会はNPO法人福岡ビルストック研究会 理事長の吉原。
聞き手に九州大学 人間環境学研究院 都市・建築学部門 黒瀬教授をお迎えし、以下6人の方に、屋上活用の事例やそれに関わるまちやシゴトバの研究について報告していただきました。
①福岡テンジン大学 学長 岩永真一氏(福岡県福岡市)
テーマ:「天神に残された最後のフロンティア!?」
②のあそびlodge 星田浩太郎氏(熊本県荒尾市)
テーマ:「荒尾駅前の屋上事情」
③一般社団法人にわむすび(福岡県福岡市)
テーマ:「緑を通じて福岡のヒトとマチつなぐにわむすび」
④地域支援ライター 森 千鶴子氏
テーマ:「イネを育て人を育てた屋上田んぼ」
⑤蘇欣怡(ソキンイ)氏
テーマ:コワーキングスペース利用者のネットワーク形成プロセスに関する研究
⑥岩淵丈和氏
テーマ:クリエイティブ人材の拠点選択に影響を与える要因に関する調査
都心における既存ビルの屋上活用ビジョンの方向性、そこで育まれるいろんなつながり、他県での屋上活用の事例、オペレーションの重要性、多様な人材が集まる仕組みの研究報告など、屋上活用を考える上で必要となるいろんな要素のお話しがありました。
また、一般社団法人 にわむすび 亀崎さんより、屋上の具体的な計画図面案のお話もいただきました。これからみなさんと考えながら、計画を実践していけたらと考えています。
そしてシンポジウム後は、屋上で懇親会。山海堂さんにより丁寧に仕込みされたジンギスカンをみなさんでいただきながら、楽しい夜の屋上時間を過ごしました。
黒瀬先生と会場のみなさんとのトークセッションでは、中小ビル屋上が本来持つ「余白」「心地良さ」に焦点を当てたお話しが展開されました。
1.高層ビルとの立ち位置や役割の違い【余白】
- 大型化と効率化された高層ビルに対して、中小ビルは使い手側も何かできる余地がある雰囲気を持っている。
- 高層ビルが都市に必要なパブリックな空間だとすると、中小ビルは「アジト」になりうるのでは。あるテーマを持って集まるようなゆるやかなつながりの活動をしやすいのではないか。
2.都市で忘れられがちな人間らしさ、ヒューマンスケール【心地良さ】
- 中小ビルは地上に近いからこそ、人が本来持っているいろんな感覚を思い起こしながら仕事ができるのでは。
- 都市の中で、人間らしい豊かさを回復していける場所として中小ビルの屋上を活用できれば、大きな魅力になる。
のあそびロッジ(熊本県荒尾市)の中村さん、星田さんにテントを張ってもらう様子
建築当時より、屋上農園や大学生とのコラボレーションなど、いろいろな試みを続けている天神パークビル屋上。
これからも実験の場として、まちの現状を読み解きながら、中小ビルに求められる役割や可能性について、みなさんと考えていけたらと思います。
今後も屋上活用について考える機会を計画していく予定ですので、ご興味ある方はぜひご参加ください。
スペースRデザイン しんの