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スペースRデザイン
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「高砂女子Rプロジェクト」は2008年~2009年にかけておこなった、築30年(当時)のレトロビル「新高砂マンション」の居住空間をリノベーションすることにより再生したプロジェクトです。

  • 「日本画と暮らす」607号室
  • 「くつろぎすとの部屋」705号室

をデザインしたアトリエ穂音 比佐水音さん、アヴァンティ 濱嶋さんの対談記事です。


―今回のお二方のテーマをお聞かせ下さい。

比佐 私のテーマは「光と影」です。イメージは茶室なんですが、全体的にそれを再現するのではなく、ほんのちょっとそのエッセンスを加える程度にしたいと思っています。例えば、茶室って光が差し込んでいる所と影が出来ている所があるじゃないですか。日本画でも画面上で、余白と描く対象物との対比を、空間として重んじるのですが、そういう日本独特の表現方法を、空間にも取り入れてみようと思いました。居室間の襖の上部にはアクリルが入るんですが、襖を閉めていても向こうで明りが点いていたら、その部分から別室に明りが漏れて間接照明になるようにしています。落ち着いた雰囲気でリラックスして癒されるような空間にしたいですね。

濱嶋 私はプランを考えた時、「くつろぎすとの部屋」というテーマを設定しました。自分が家に居ることが好きなので、住む人がくつろげる空間にしたいと思ったからです。やっぱり毎日生活する場所だから、居心地悪いなんていやじゃないですか。ただ帰宅して寝るだけの部屋にもしたくなかったので、快適に過ごせる空間づくりを心がけました。私は他のデザイナーさんと違って、クリエイターではないので、「自分が住むなら・・・」という視点で考えました。今回はプチリノベーションということだったので大幅には手を入れずシンプルに、パーテーションをつけたり、塗装の色を変えたり、プラスαするリノベーションを提案しました。

―比佐さんは、昔から古い物件のファンだったとお聞きしていますが、エピソードなどあればお願いします。

比佐 京都に住んでいた頃にはわざわざ古い物件ばかり探し出し、古くて給湯器すらついてない、水しか出ないような所に住んでいたことがありました。本当に京都って昔ながらの、例えば、ベランダに出ないとトイレに行けないとか、不便な造りが多いんですよ。だから、古い物件に住むには利便性だけ求めると住めないですよね。私の場合、今はもう無いですが、実家は設計家だった父の設計した1951年築の木造住宅だったので、古い家の方が不便でも馴染むというのがあったのでしょうね。
部屋探しの際は、どうしても自室と画室を別にしたくて二間以上ある物件を探していたので、自然に古くて広い所に行き着いていました。そういう所に住んでは、自らペンキを塗ったりして、必然的にリノベーションしていましたね。だから、この冷泉荘に入った時も自分達でペンキを塗りました。絵を描く仕事をしているから、プランを考えるだけでなく、多分こういう現場作業も根本的に好きなんだと思います。

濱嶋 そういえば、私の実家は築30年近く。私とともに成長しています。今も昔のまま、2階の窓にちょっと模様の入ったガラスが入っていて、それがとてもいい味を出しています。よく考えると、私もレトロとか古いものが好きですね。現在も吉原住宅さんの物件に住んでいるんですが、それでも比佐さんのおっしゃたような本当に古い物件には住んだことがないですね。

―比佐さんは、男女問わず30代位の入居者像とのことですが、濱嶋さんはプランニングするにあたり、具体的な入居者像はありましたか?

濱嶋 私が考えていたのは、丁度私くらいの世代の、20代後半~30代の仕事をがんばっている女性を想定しました。仕事から帰ってきて、家でほっこりする時間をもってもらえたら・・・。ここから、「くつろぎすとの部屋」というテーマにつながるんです。だから、比佐さんの男性も想定してっていうのは面白いですね。私の場合
は当初から女性に絞っていたので、聞いた瞬間、『男性かぁ!』って思いました。

比佐 女性に住んで欲しいっていうのも当然あるんですが、最初から男性も想定していましたね。芸術分野だと、両方の視点から物事を捉える目がないと、もの創りはできないと思うんです。だから、多分私にもそういう感覚があるんだと思います。やっぱり仕事柄、普段からそういうものの見方をしていますね。

濱嶋 なるほど~!私は編集をしている情報誌が女性誌なので、完全に女性目線なんでしょうね。記事を書くときは客観的に考えたりはするんですが、それはあくまでも女性目線での客観性であって、男性の目線はほとんどなかったと思います。そう考えると、比佐さんも私もそれぞれの仕事の立場から考えた部屋になっていますよね。それにしても、お互いどれだけ仕事人間なんでしょうねぇ(笑)。

―最後に、リノベーションについてのお考えをお聞かせ下さい。

比佐 私は、やっぱり古い建物が好きで、なるだけ古いものが“良い”と思っています。その“良い”ところを残せるっていうのが、リノベーションの良さだと思うし、本当に理想的な形ですよね。コンクリートって元々、川の砂利で作っていたのが、高度成長後に足りなくなって海の物を使うようになったんですって。でも、海砂の塩分が鉄筋に良くないので、実は古いコンクリートほど丈夫なんだそうです。だから、東京の同潤会とかも多分まだ残せたんじゃないかなぁって思えて、本当に勿体無くて残念です。そう考えても、新高砂マンションは、古い部分や味を残しつつ、今回のリノベーションで、設備とかはちゃんと整えて、水回りが全て新しくなるから、住むには安心だと思います。


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