「高砂女子Rプロジェクト」は2008年~2009年にかけておこなった、築30年(当時)のレトロビル「新高砂マンション」の居住空間をリノベーションすることにより再生したプロジェクトです。
- 「くつろぎすとの部屋」705号室
- 「room”AIR”」208号室
- 「room RELAX」506号室
をデザインしたアヴァンティ 濱嶋さん、吉原住宅 坪根さんの対談記事です。
―濱嶋さんの提案はストーリー性のある、まさに雑誌の一ページのような提案ですが、そのキーワードともいえる「くつろぎすとの部屋」というテーマについて教えてください。
濱嶋 私自身、家に居る時間が好きで、会社のホームページ内にある担当ブログも「おうち大好き」にしてしまうほどなんです(笑)。実は私も、リノベーションのお部屋に住んでいるんですが、お部屋のデザインはすごくかっこいいんですけど、自分が友達の立場で私の部屋に呼ばれたら、かっこよ過ぎて、そわそわしちゃうかなって(笑)。だから、私も、うちに招いた友達も、みんなくつろげるような、そんなあたたかみのある空間を作りたいなって思いましたね。
坪根 くつろぐっていうと、一人でのんびりしているのをイメージしてしまいますけど、濱嶋さんはお友達を招いたりする場合も含めてテーマを考えられているところがおもしろいですね。
―一人でくつろいだり、人が集まったりというイメージは、どこかデザインに反映されていますか?
濱嶋 ん~、デザインというよりかはリノベーションする部屋を決めるときにこのイメージが合うような間取りの部屋を選びましたね。私の選んだ部屋は、角部屋で摺りガラスやダイニングの窓とか、ほかの部屋にはないパーツがあった上に、その雰囲気がすごく良かった。それにここは他の2DKより少しだけ狭くて、それが逆に私には人を招いても狭すぎず、一人でいるときも広すぎずで、ボリューム良く感じられたんです。なので、あとは感覚でデザインしていった感じですね。色々な本を手にとって、これは使えるっていうアイデアを、バランスを考えながら図面上に落とし込んでいった感じです。
坪根 不動産会社の人間としても、濱嶋さんのプランは残すところと新しく付け加えるデザインのバランスがとてもいいと思います。実際に、オーナーさんにも参考になるようなリノベーションだなと思いました。
―「くつろぎすと」という入居者像は当初から想定していたんですか?
濱嶋 実際は「くつろぎすと」という、入居者像ありきのデザインではなく、デザインが先行する中で現れた入居者像ですね。部屋自体の持つ雰囲気や私がプラスしていったデザインは、こういう人が好むだろうなって感じで自然とでてきましたね。
坪根 私も初めて手がけたリノベーションのときはそんな感じでしたね。今回は、女性がデザインする男性の部屋っていうコンセプトで2室のプランを考えたんですが、2室もさせてもらえるんだったら、それぞれ違うけど、どこか似ているっていうつながりみたいなものをお互いの部屋に持たせたかったんです。そうすると、デザインだけ考えるとほとんど同じ部屋か、全く別の部屋しか思いつかなかったんです。
だから、視点を変えて、空間からデザインをスタートさせるのではなく、その部屋の主人公みたいなのをそれぞれに想定して考えたら、わりとすんなりプランが出てきて、その微妙な感じが表現できたかと思います。
―主人公は具体的にどんなイメージですか?
坪根 ほとんど妄想に近いですけど(笑)、両方とも20代後半の男性で、208号室のほうが大名とかによくいるような、自転車好きの男子で活発なイメージです。それに比べると、506号室のイメージはちょっとませた文化系男子ですかね。だから、部屋自体も、2階のほうは軽やかな感じ、5階のほうはちょっとしっとりした感じになっています。
―今回、デザインするにあたって心がけたことなどありますか?
坪根 私はこれまで2室、リノベーションのプランを考えたり、実際に工事を経験しているので、それを活かせればと思いました。
濱嶋 私自身、非常に現実主義なんですけど、今回は私のそういうところを活そうと思いました。私はアーティストじゃないし、デザイナーでもない。編集者という肩書きはあっても、一ユーザーにかわりありません。だから、私にできる「リノベーションデザイン」というのは、ユーザー目線のデザインかなと思っています。以前、仕事でリノベーションに興味を持った方たちとお話しする機会があったんですが、最近では住まい方としてリノベーションを選ぶ方って本当に増えていて、そういう方たちの目も肥えてきたなと思いました。でも正直なところ、これだけ自分の考え方や住まい方をプランに入れ込んだりすると、つくづく自分のライフスタイルについて考えさせられましたね(笑)。