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スペースRデザイン
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8月も残すところ1週間となりました。
じめじめと蒸し暑い日が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

さて、九州各地(&長野)よりお届けしております「九州DIYリノベWEEKENDオンラインステーション」の第21回目は、山王マンション1階にご入居いただいている黒田木材商事さんのショールームをお借りして、8月21日(土)に配信をおこないました。

山王マンションの20年を想像しながら、ぜひご一緒にレポートを振り返っていただけると幸いです。

山王マンションは、博多区博多駅南に建つ築53年を迎える賃貸マンションです。
2003年に国内でも初期となる賃貸リノベーションを手掛け、現在に至るまでに全居室の3分の2以上が全て異なるデザインにリノベーションされた「リノベーションミュージアム」です。

今回は、そんな山王マンションにてリノベーション初期の時代から携わっていただいている信濃康博氏(九州産業大学建築都市工学部 准教授)と、黒田木材商事株式会社 常務取締役の黒田覚氏、スタッフの冨島基宏氏にご出演をいただきました。また弊社代表であり山王マンションのオーナーである吉原が進行を務め、リノベーション課の本田がインタビュアーとして様々なお話しを伺いました。

いまでは福岡を代表するビンテージビルとして知られる山王マンションですが、2003年以前、信濃氏に出会う前の状態は悲惨だったといいます。当時の日本と海外では建物に対する価値観が大きく異なり、新しいものが好まれる日本に対して、欧米には築年数の経過とともに収益力が上がるビンテージの概念、さらに共感で培われるコミュニティ型賃貸の姿がありました。

この「経年優価」という価値観を日本の賃貸ビル経営にて実現すべく、現在の弊社の経営理念にもつながる築100年構想がスタートするのです。

この日はちょうどタイミングよく、過去に信濃氏がデザインしアメリカの建築デザイン系ウェブマガジンで審査員賞を受賞した部屋を含め4室のリノベーション部屋が見学できたので、当時を思い起こしながらデザインを振り返りました。
4室のリノベーション時期はそれぞれ、2006年、2008年が2室、2012年。これだけ一気に過去のリノベーション部屋が見られるのはレアなことです。リノベーションの部屋はオンリーワンのデザインなので、退去のタイミングでしか見ることができず、私たちも見たことのない部屋がまだたくさんあります。
またこの4室に至ってはほとんどのスタッフが入社する前にリノベーションされた部屋で、その経緯や物語を聞く機会などは意外となく、入社10年を超える私でさえもこの日の信濃氏と吉原の会話で初めて知ったことがたくさんありました。

なかでも印象的だったのが、4口コンロの真実。
学生コンペにてデザインされた406号「colorful life」。まずこちらが女子チーム担当だったとは初耳でした。そして、なぜにここだけ立派な4口コンロが付いているのかがスタッフの間でも謎だったのです。

それがまさか・・・
学生さんの主張に押し切られる形でOKを出したものだったとは。
さすがの吉原も女子学生には勝てなかったのですね…笑。きっと彼女たちのプランには、4口である必要が強くあったのでしょう。
そんな話を聞くと当時のやり取りが想像されて部屋への親しみや愛着がより深まる気がするのと、謎が解明されてスッキリしました!

また、当時はまだ使用例の少なかった素材や、今では賃貸でも多く見られるようになった無垢フローリングも当時は実験的な試みであり、悩みながらの選択の繰り返しだったようです。それが10年以上経過したいま、果たして正解だったのかなどについても思い出とともに検証されました。
建物の歴史において、その分かりやすいものの一つがリノベーションのデザインです。リノベーションにはその時代の流行など最先端がデザインに反映されており、その変遷からはリノベーションの歴史をみることができます。そしてそれは使用する素材にも言えるようで、黒田常務からはフローリングの歴史やトレンドの変遷、木材事情などをお話しいただきました。

フローリングの文化はヨーロッパが発祥であり、フローリング材は大きく分けて、針葉樹(杉・檜・松など)と、広葉樹(オーク・樺・胡桃など)に分かれます。
欧米では土足文化に対しての耐摩耗性として広葉樹が一般的に使われてきたそうです。対して日本では戦後針葉樹が多く植樹され、その特徴は素足で立つと疲れにくいという柔らかさ。一方でその柔らかさが温度や湿度の変化に影響を受けやすいという弱点もあるそうです。近年では日本でもオークなどの広葉樹が人気で多く流通するようになっているとのこと。弊社のリノベーションでも最近使用する機会が増えています。
フローリング材は木の種類(何万も)だけ作ることができますが、その土地の気候に適していないと曲がったり割れたりするそうで、それらをクリアしてきたものがいま流通している木材なのだそうです。
なお近年はウッドショックの影響により木材の価格が高騰しており、年内は不安定な状態が続く見通しとのことです。ただ木材によって価格変動の大小もあるようなので、木材やフローリングでお悩みの方は、黒田木材さんへ相談してみられるといいかもしれませんね。

続いてリノベーションデザインの変遷を少し違う切り口から考察したのが、弊社のリノベーションデザインと工事を担当する31歳の本田。
賃貸リノベーションのデザインと店舗デザインの相関について、自身はまだ幼少だった頃の福岡の流行とその歴史について探り探り辿ってみたようです。

2000年代といえば大名は最盛期の頃、コンセプトもテイストもさまざまで多様なカフェが点在したカフェブームのはじまりです。その後2010年頃からは有機的な素材を使用した自然派のお店が増え始めます。リノベーションデザインの変遷を見返してみると、カフェの雰囲気は確かに反映されているようで、さらに現代ではコロナ禍の影響もあり、カフェやワークスペースといったこれまで外部機能だったものが住宅に持ち込まれつつあるようです。
今後福岡のムーブメントと賃貸デザインの変遷についても時代ごとに比較をしてみると、さらに面白い結果がみえてくるかもしれませんね。

最後に・・
山王マンションの入居者は自分のライフスタイルをもっており、画一化された賃貸を好みません。古さの中にある価値を自分のライフスタイルに重ねる、そういう文化が広がってきています。とはいえ、部屋の価値は単体ではなく建物全体が一つのブランディングです。
今日話した内容は5年前に吉原と信濃氏が話したことと違ってきているそうで、それは建物が生き物のように時代に順応しているということのようです。コロナのような全く予測できない事態が起こり得る世の中、むしろそれが自然な在り方のようです。

山王マンションは私たちの管理する建物ですが、その歴史を知れば知るほど、その存在は私たちの手中に収まらないほど大きなまちの財産のように思えてきます。それを預かる責任をもって、次の50年にしっかりと寄り添っていかなければと改めて感じました。

「この建物に住みたい。」
そう思ってもらえる山王マンションであるように、これからも建物を育んでいきたいと思います。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
オンラインステーション残すはあと3回、次回は8月28日(土)樋井川村へバトンをつなぎます。

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