今回、私たちは築64年を迎える昭和のレトロビル、冷泉荘の管理人を務めている杉山さんのお話を聞き、杉山流掃除を体験してきました。
お話を聞いて、杉山さんは常に発信者の視点を持っていて、それが管理人としての働き方にも反映されていると感じました。個性的なファッションは他人に自身を記憶してもらうのに役立ち、フィギュアやマニアックなグッズであふれた管理人室は、皆が冷泉荘に入りやすい雰囲気づくりに繋がるものでした。
そして、「掃除」に対しても発信者の視点が組み込まれていました。杉山さんは「掃除」をただ建物をきれいにするためのものではなく、広報、または人との関わりづくりとしても位置づけていました。あえて人が出入りする時間帯に掃除することで、周りの人に清掃されている冷泉荘のイメージを持ってもらったり、通りがかりの人とコミュニケーションをとる機会を得たり、「掃除」が冷泉荘の発信の一環となっているそうです。杉山さん曰く、このようなルーティンワークを、広報目線で考え、毎日丁寧にやってみることで、クリエイティブな発想が生まれたり、細かなことに気づく力が養われるようです。
そんな杉山さんは、冷泉荘周辺の掃除を毎日丁寧に2時間ほどしているそうです。そうすることで、建物の特徴的な部分や小さな変化に気づくことができるんだそう。
そこで、実際に杉山流掃除を体験してみました!最後には、「掃除=修行」なんだなという感想を持ちました。掃除を丁寧に始めて8年、つまり修行8年目の杉山さんは、使う掃除用具、その使い方、掃除の仕方にも杉山さんのスタイルがありました。正直なところ、冷泉荘の床は凸凹が多く、素人の私には難しいものでした。しかし、階段の滑り止めにも一段ずつ個性があることに気づくことができたり、補正されている場所とそうでない場所を見分けようとしたり、冷泉荘について深く考える時間になりました。本当に些細なことですが、建物と会話ができたような気分で嬉しくなりました。この修行を毎日続ければ、より建物のことを知れるようになり、もっと知りたいという関心が出てきて、愛着も湧くのかなと思いました。
杉山流掃除は、人とのコミュニケーション、建物とのコミュニケーションを図るもので、冷泉荘の魅力は杉山さんありきのものなんだろうなと感じた1日でした。
福岡女子大学3年 黄木 琳子