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スペースRデザイン
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6月17日(月)久留米のMekurutoにて、「筑後ほとめきカレッジ一年後報告会」としてくるめぐらし会議vol.04を開催いたしました。

筑後ほとめきカレッジとは、国土交通省民間まちづくり活動促進事業の一環で、ランドスケープデザインとまちのイベントをきっかけに、コミュニティを生かした”まちづくりプロジェクトマネージャー”を養成する連続講座で、2017年11月~2018年3月に久留米のコーポ江戸屋敷にておこなわれたものです。

講座の中では参加者によるプロジェクト発表がおこなわれましたが、その後一年半が経過しそれぞれの活動が目に見える形になってきたことから、このたび一年後の報告会として発表と意見交換をおこないました。

発表者は久留米市内4つのエリアの4名
●江戸屋敷/職人シェオフィスBASE
●合川/松葉ビレッジ
●櫛原/H&A brothers(半田兄弟)
●青峰/Seed SEIHO project

ディレクター及びアドバイザーが以下4名
●吉原 勝己/吉原住宅・スペースRデザイン代表取締役
●徳田 光弘/九州工業大学大学院 工学研究院建設社会工学研究系 准教授
●須部 貴之/株式会社 KISYABAREE 代表取締役
〈鹿児島からのゲスト〉
●加藤 潤/NPO法人頴娃おこそ会観光プロジェクトリーダー

まずはまちづくりの先生であるアドバイザー4名より、この事業のベースにあるストックデザイン&マネジメント (SDM)地域エスコートプログラムの説明や、これに則したご自身の活動や事例報告から。

吉原より、3年間で大きく変化したコーポ江戸屋敷のコミュニティレベル(共感)の事例があげられ、まちの在りようとまちづくりプレイヤーの教育、学びの場の在り方について考えてほしいというメッセージが投げかけられました。

また徳田先生からは、SDMの三軸である
・社会実験事業
・大学院教育プログラム
・地域エスコートプログラム
について、それぞれの事例を交えた説明をいただきました。

S(ストック)は、地域資源「人・モノ・カネ・情報」であり、SDMとは、「各エリアでそこに見合った豊かな暮らしの作り方があり、自ら地域の人で作っていこうというプログラム」であること、そしてそのためには地域産業、地域社会と行政が協働で作り上げていく必要があることなどをお話しいただきました。

鹿児島騎射場「のきさき市」主宰、コーポ江戸屋敷にてまちづくりイベントの教育プログラムを実行している須部さんからは、イベントを開催することが目的ではなく、人材育成、新規事業、アントプレナー(新しい市場を切り開く起業家)の育成が真の目的であることをお話しいただきました。須部さんは「子供たちに地域の思い出を残す場をつくる」ことを意識しイベントを企画実行されているそうです。

さらに鹿児島頴娃町にて古民家を再生し場づくりやまちづくりの取り組みををおこなっている加藤さんからは、空き家再生がハードではなくソフト事業と捉えられること、それはハード再生の前後にある家主との交渉や地域との関係づくりこそ、繊細でありながら最も肝となる地域再生の本質であることをお話しいただきました。

さすが九州を代表するまちづくりの先生方です。
活動の目的やそれを取り巻く関係性がしっかりと理論化、プログラム化されており、深く納得。
再現性のあるこれらの手法をどのように自分たちのまちに見合った形で落とし込み、エリアの活動に活かしていけるか考えてみると、きっと新しい気付きが生まれるのではないかと感じました。

さて、すでに濃すぎるほどの内容のお話しをいただきましたが、ここからがようやく一年後報告会です。

●トップバッターは江戸屋敷の職人シェアオフィスBASEの職人チーム。
職人同士のつながりが少ないなど多くの課題を抱えるなか、職人がものづくりの考え方を共有するシェアオフィス「BASE」を提案。コーポ江戸屋敷の1室に職人の技術とアイディアが詰まった場が誕生しました。

BASEの考え方は「工事体制の隙間を埋める体制」。
職人同士がお互いの職業に一歩ずつ踏み込んで仕事をすることで、アイディアが出やすく、話しやすい関係づくりを目指しました。オープン当初5~6名だったメンバーは現在12名に、家一軒が建てられるメンバーが集まりました。これにより仕事の幅が広がり、チームでさまざまな仕事に携わる機会も生まれています。

またコーポ江戸屋敷は若手職人育成につながるワークショップなど、アイディアをすぐ実践できる場所として職人のビジネスにもつながっています。使う人、つくる人に寄り添う新しい工事の在り方を目指し、それぞれの職人が新しいアイディア、事業を展開しています。

>>アドバイザーからは、こんな職人が集まるチームはなかなかなく羨ましいという声が聞かれたほか、キーワードは技術以外の組織の開放性。パートナーシップ、フレンドシップといった協力関係に加えチームの中心にオーナーがいることがポイント。競合を協力者に変え、実践することで課題を学びに変えていることが評価されました。

●続いては、合川の木造戸建て「松葉ビレッジ」の大家であるIさん。
受講前には、良いものを安価にという気持ちで室内のDIYリノベに取り組んでいましたが、最近ではコミュニティデザインを意識するようになりました。一生懸命にDIYや草取りをしたり、花植えなどエクステリアの手入れをするうちに、入居者さんやお向かいさんとの会話が生まれつながりができました。

ほとめきカレッジでの一番の収穫は、大家として家を提供する側の基本的な心の持ちようや考え方を学べ、それを一緒に学んだ仲間と共有できたことでした。

>>アドバイザーからは、数年後のイメージを明確にもち、それを目指して逆算的に動いていくことが大切。目指す山はそれぞれ違っており、Iさんらしいところにとても可能性を感じますとの声が。
一個人の大家さんとしてどんどん素敵に成長するIさんの姿はみんなに勇気を与え、人の心を動かす力があることを感じました。

●そして櫛原エリアのH&A brothers(半田兄弟)より。
2010年から大家として自らDIYを開始、2012年からは食事会と、いま思えばハードとソフトを交互に展開してきていました。筑後ほとめきカレッジ後には「ほしい暮らし」をサポートするための場の活用をスタート。やりたいことを実現できる場を作ることで、プレイヤーが生まれ、活躍の場がまちに増えると考えています。

くしわら駅前マーケットは、アパートのイベントから駅前イベントとして広げることで、場所提供の協力やお手伝いのスタッフが増えました。またエリアへの転居、イベントスペース利用から出店者がアパートの一室でカレー屋やカフェを定期営業するようになりました。
なんと、3年前に描いた妄想イラストの通りになってきているのだそうです。

>>アドバイザーからは、半田兄弟のコミュニティデザイン力に驚きの声があがる一方で、コミュニティデザインの職業としての可能性についてなど質問が出ました。管理業務は分かりやすいのに比べ、コミュニティの形成などソフト事業をどのように仕事として成立させるか、また若手をどのように育成するかなどが今後の課題として上がりました。

●最後は、一年半前の筑後ほとめきカレッジがきっかけで生まれた青峰チーム Seed SEIHO project。
青峰は創立50年のニュータウン、お年寄りが多い地域で孤独死が社会問題でもあります。昔は人口も多く地域活動がありましたが、現在では任意の活動団体はなくなりました。
町内プレゼンを12回おこない、夏祭りに参加するなどまちのキーパーソンとのつながりをつくり、まちの人たちがつながるきっかけとなる小さな余暇活動を増やす取組みを始めています。

どんな暮らしがしたいかを考える「青峰ノック」や、マルシェを通して生まれたアイディアを実践する場「青い屋台村」を実際に企画し実行しています。2021年には町民イベントをまちのみんなで作りたいと考えています。

>>アドバイザーからは、新しいカタチの福祉であり、可能性が高いと評価の声。民間でここまでできるのはすごい。ただ行政も困っているはずなので、一緒にやることでさらなる課題解決へつなげられるのでは。始めることよりも続けることが難しいので、仲間と連携したり周囲に甘えることも大事。無理なくみんなができるやり方こそ再現性があるのだというアドバイスがありました。

そして会の締めくくりとして、この日参加者として聴講されていた久留米工業大学の稲益先生より一言。
建築は建物をつくるだけでなく、人と人との営みを生み出します。場を守ることで人々のコモンセンスを共有しまちの記憶を残し思い出をつくります。ストック活用はまちの維持、コミュニティにつながっているのだと素晴らしいお言葉をいただきました。

久留米には、やはり自分サイズの活動を生み出す不思議な力があるように思います。
くるめぐらし会議vol.04レポート、長文になりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。
4チームのみなさんと久留米がこれからどんな進化を遂げるのか、ますます楽しみです!

くるぐらハッコウ所 助手 まえだ


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